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 そんな名前をつけないで

 名前が与える印象

主人公の名前は『オレサマ』、ヒロインは『ブリコ』、敵役は『ワルオ』。 さて、このRPGにぴったりのタイトルは次のうちどれでしょう?

  1. OOparts〜時を翔ける古の歌声〜
  2. ぐ〜たら物語〜お前のものは俺のもの〜
  3. 虹色の銀河鉄道〜闇夜の光を集めて〜

iはありがちな横文字タイトル。ちなみに『オーパーツ』と読んでもらいます。 ii,iiiはいずれも日本語タイトルですが・・・ ほとんどの方はiiがぴったりだと思ったのではないでしょうか?  主人公の名前がやや弾けた感じなので、 タイトルもそれに見合ったものを想像するのが普通なんですね。

では続いて、『アイリア』『パップピリン』『ゴルブーム』という名前の人物は、 それぞれ次のうちのどれに該当するでしょうか?

  1. 30代のおっさん
  2. 10代の女の子
  3. 謎の生命体

正解は『i:ゴルブーム:30代のおっさん』『ii:アイリア:10代の女の子』 『iii:パピリン:謎の生命体』でした。当たりましたでしょうか?  もしこれが『ゴルブーム:10代の女の子』『アイリア:謎の生命体』 『パップピリン:おっさん』だったら、なんか違和感がありますよね?  このように、名前には『それ自体が与える印象』というものがあるのです。 これは人物名だけでなく、ゲームタイトルや魔法・必殺技名、町名にも言えることです。

 母音が『あ』『い』『え』中心な名前は女の子向け

母音が『あ』『い』『え』中心で構成されている名前は、 『女の子っぽい』印象を与えます。以下例をいくつか示します。 いずれも適当に文字を組み合わせただけの名前ですが、 女の子っぽい名前に見えますでしょう?

[]内では母音の個数を示しています。

  1. イリン [い:2]
  2. アッカ [あ:2]
  3. エレマリー [あ:1 い:1 え:2]
  4. メテリィ [い:1 え:2]
  5. ケロッサ [あ:1 え:1 お:1]
  6. ピリル [い:2 う:1]
  7. マーシリア [あ:2 い:2]

 『ィ』『ア』で終わる名前は女の子向け

最後が『リィ』『ア』で終わる名前も同様に『女の子っぽい』印象を与えます。 以下例をいくつか示します。

  1. レイリィ
  2. オルマイリィ
  3. テテリィ
  4. リリア
  5. ノーア
  6. フロリア
  7. ルーア

 『が行』が含まれる名前は力強い感じ

『が行』が含まれている名前は、 力強い印象を与えます。以下例をいくつか示します。

  1. ガルバーム
  2. トゴンガム
  3. ファンゴー
  4. ゲルゴルイ
  5. ゴルゴッチェム
  6. フゴルト
  7. デ・ゴンゴン

 『半濁音』中心の名前は明るく、神秘的な感じ

『半濁音』が中心である名前は、明るく、神秘的な印象を与えます。 以下例をいくつか示します。

  1. パピリム
  2. フーパッパ
  3. ポムペティ
  4. ププラ
  5. ピンポルーム
  6. ポピン
  7. ドンパープーレ

 繰り返しの名前は幼い感じ

繰り返し表現を含む名前は、幼い印象を与えます。 以下例をいくつか示します。

  1. クルクル
  2. ポルポル
  3. トクトク
  4. ハルーハルー
  5. トルノッチョパルノッチョ
  6. フェンフェン
  7. ゲムゲム

 『は行』中心な名前は柔らかい印象

『は行』中心で構成されている名前は、柔らかい印象を与えます。 以下例をいくつか示します。

  1. ファン
  2. フォルン
  3. ヘテハロイ
  4. フローフィル
  5. ハホメッタ
  6. レファーフル
  7. トファーフィア

 『シュ』『ショ』が含まれる名前は爽やかでかっこいい印象

『シュ』『ショ』が含まれる名前は、さわやかでかっこいい印象を与えます。 以下例をいくつか示します。

  1. シューヘル
  2. クレション
  3. レプシェル
  4. ショルク
  5. ハムショッタ
  6. シュリナ
  7. レパルシュ

 応用編

今までの知識を応用して、最適な名前をつけてみる事にします。 まずは・・・主人公の敵となる軍事国家と、その国の長の名前を考えてみましょう。 力強いイメージは『が行』でしたね。ということは・・・ガルゴレなんてどうでしょう?  何か怪獣っぽいですが、それはそれで仕方が無い事です。何しろ怪獣の名前自体が 同様の手法によって命名されているわけですから。ゴジラもガメラもが行でしょう?  続いて長の名前は、かっこいい感じにしてみましょうか。『シュ』を用いて・・・ シュレインなんてどうでしょう? ガルゴレ国のシュレイン大統領。 なんとなくそれっぽい名前に仕上がりましたね

 タイトル、アイテム、魔法・特技の名前を考える

これらのネーミングは、人名や町名と違って、印象だけに頼る事はできません。 従って、新たに今までとは異なった手法を用いる必要があります。 私が用いている手順は、次のとおりです。

  1. 対象物をイメージする
  2. iで浮かんできたイメージを単語にする
  3. iiの単語をリストにする
  4. リストに同義語を加える
  5. リストの単語を色々と組み合わせてみる
  6. vから候補をいくつか選び、再編集、サブタイトルをつけて完成

では、実際に上記の手順を踏んで、 昔話『桃太郎』に別タイトルをつけてみましょう。

  1. 対象物をイメージする
    • 大昔の田舎村に、おじいさんとおばあさんが住んでいる
    • おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行く
    • おばあさんが洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れてくる
    • おばあさんは桃を回収する
    • 家に帰って桃を割ると、中から男の子が出てくる
    • おじいさんとおばあさんは、その男の子を「桃太郎」と名づける
    • 桃太郎はすぐに大きくなる
    • 桃太郎は鬼の悪さに胸を痛め(?)鬼退治を決意する
    • おばあさんは桃太郎にきび団子を持たせる
    • いざ、鬼ヶ島へ
    • イヌ、キジ、サルが仲間に加わる
    • 鬼ヶ島につくと、鬼が襲い掛かって来る
    • 桃太郎一行は鬼をやっつける
    • 鬼は降参し、宝物を譲ってくれる
    • 桃太郎一行は宝物を持ち帰り、おじいさんとおばあさんと幸せに暮らす
  2. iで浮かんできたイメージを単語にする
  3. iiの単語をリストにする
    『昔』『日本』『田舎』『山』『おじいさん』『おばあさん』 『柴刈り』『洗濯』『川』『桃』『包丁』『男の子』『鬼』 『成長』『鬼』『悪さ』『退治』『きび団子』『イヌ』『キジ』『サル』 『仲間』『鬼ヶ島』『刀』『降参』『宝物』『幸せ』
  4. リストに同義語を加える
    『太古』『和風』『のどか』『peaceful』『自然』『nature』『老夫婦』 『老人』『山仕事』『水』『peach』『食べ物』『demon』『動物』『アニマル』『悪』 『闇』『黒』『進歩』『育つ』『悪事』『exterminate』『悪行』『討伐』『vengeance』 『復讐』『団子』『dumpling』『酉』『戌』『申』『友』『アジト』 『ワン』『ケーン』『ウッキー』『武器』『剣』『敗北』『財宝』『幸福』
  5. リストの単語を色々と組み合わせてみる
    • Demon Extermination(鬼退治)
    • Dumpling Story(団子物語)
    • Peach Boy(桃男・・・どんな訳だ)
    • 戌酉申
    • 桃色の復讐
    • 大海原に潜む闇の城
    • 鬼の笑う島
    • のどかな村の一大事
    • 団子に笑い鬼に泣く
    • 鬼ヶ島の思い出
    • 我は行く。幸福の金棒を求めて
    • 食い意地
    • 魔法の団子
    • 闇の島
    • 地獄に団子
    • 桃色の勇者
    • 母を訪ねて鬼退治
    • 鬼の目にも団子
  6. vから候補をいくつか選び、再編集、サブタイトルをつけて完成
    横文字で気に入ったは『Peach Boy』。
    日本語タイトルでは『桃色の勇者』でしょうか。
    特に改善点は浮かばないので、サブタイトルをつけて・・・
    『Peach Boy〜団子に笑い鬼に泣く〜』
    『桃色の勇者〜母を訪ねて鬼退治〜』これでバッチリですねv←本気か

とまぁ、こんな感じで連想していくわけですね。 vでは、ストーリーを思い浮かべながら、アイディアが出るまで、 ひたすらPCの前やお風呂の中で「う〜ん・・・」と唸りましょう(^^;) この時のポイントとしては、次の3つがあります。

  1. リズムをよくする
  2. できるだけ抽象的な表現を心がける
  3. 詩的に魅せる

 リズムをよくする

iに関しては、メインタイトルよりもサブタイトルで効果を発揮します。 リズムがいいというのは、俳句で使うような『五七五』や、 流れの美しい『三四五』等で文字が続く事をいいます。 例えば上で挙がった『母を訪ねて鬼退治』なんてのは、 『母を(3文字) 訪ねて(4文字) 鬼退治(5文字)』になるという、 リズムのいい文句の典型ですね。さすがにタイトルでは、 俳句のような『五七五』は長いのであまり使われません。 よく使われるのは「行け! 行け! 急げ!」 といった『二二三』とか、『俺は お前を 許さない』といった『三四五』、 『鬼の 目にも 団子』といった『三三三』、 『光の 道は 開かれた』といった『四三五』なんかですね。 基本的に数はあまり関係ありません。ポイントは読んだ時のリズムがいいこと・・・ こればかりはコツをつかむしかありません。 ちなみに第26話のタイトルも、『三四五』と結構リズムを良くしていたりします(^^;)

 できるだけ抽象的な表現を心がける

桃太郎のお話はよく知られているので、 タイトルを『鬼退治』としても違和感はありませんが、 全くストーリーの知られていないRPGの場合、 タイトルにこういった語句を含める事は、あまりお勧めできません。 なぜならば、これによって途中で先の展開を読まれる危険性があるからです。 おそらく、鬼が登場した時点で、ほとんどのプレイヤーは先を読んでしまうでしょう。 第17話で述べたように、 プレイヤーに先の展開を読ませてはいけません。 よって、このような具体的なタイトルは避けるべきなのです。

理想的なのは、クリアして初めてタイトルの意味がわかるようなものですね。 桃太郎の例ですと、どんでん返しも何もあったものではないので、 ちょっと難しいのですが・・・終盤の展開を少しだけ変更して、 『実は桃太郎の生みの親は鬼だった』ということにすると、 『鬼の首と母の背中』とか『涙色の復讐』なんていいかもしれません。

 詩的に魅せる

詩的に魅せるコツは、あえておかしな表現を使うことです。 『我は行く。幸福の金棒を求めて』なんてその典型ですね。 正しくは『幸福の金棒を求めて我は行く』ですが、 順番を入れ替えることで、ちょっと変わった印象を与えています。 また、『幸福の金棒』というのは、それ単体では意味がわからないですが、 『金棒を持つ鬼を退治する事で、幸せを手に入れることができる』ということを この2つの単語の結びつきだけで表現しているわけですね。 他にも『空が泣いた夜』とか『小鳥が歌う』とか、 実際には用いられない表現を使うことで、 詩的に見せる事ができるわけです。

 まとめ

名称はそれ自体にイメージを持っています。 そのイメージに合った人物や町に名前をつけないと、 最悪の場合、世界観やその人物を破壊する事にもつながりかねません。 このことを常に意識して、最適な名前をつけるように心がけると良いでしょう。

[2005/02/06に書いたよー]


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