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 脱線がおもしろい

目を覚ます主人公。そこはいつもの部屋だった。 いつものようにトイレへ行き、リビングのテーブルに座る。 すると、母親がテーブルの上にパンとマーガリンを置く。 霙印(みぞれじるし)のマーガリン。それはいつもの安物だった。 テレビに出ているいつものアナウンサーをボーっと眺めながら、 いつも通りまだ70%眠っている顔でパンを口にする。 時計を見て、まだちょっと口に入れるには大きいパンの欠片を無理矢理放り込む。 そして、いつものように制服に着替えて家を出る。いつもの景色、いつもの感覚。

学校に着くと、いつもの席につく。いつもの授業。1時間目2時間目・・・ いつもの料金を払って、いつものバスに乗る。いつも通り眠い。 家に着くと、いつもの母がいつもと同じことを言う「おかえり」と。 夕食はいつも通り1週間おきにローテーションで出てくるカレーライス。 いつものテレビを見て、いつも通り趣味のギターを弾く。今日も疲れた。 ああ。またこんな時間か。もう寝よう・・・そして、翌日へ。今日もいつも通りの・・・

 物語は先が読めたら駄目

この物語は、あと数か月、主人公が卒業するまで続きます。その間、毎日特にこれといった 事件は起こりません。ひたすらいつものように日常を繰り返すのです。 もし、こんなRPGがあったとしたら、プレイしてみたいと思いますか? 普通は思わないですよね。 では、なぜプレイしたくないと思うのでしょうか? それは『先の展開が読めている』からです。 先がわかっているのに、わざわざプレイしたいとは思わないでしょう。 RPGは『この先どうなるんだろう?』と思うから面白いのです。

 予想外の展開。それが面白い

では、どうしてもこの設定でRPGを作りたい場合には、どうしたらいいのでしょうか?  簡単です。いつも通り走っている列車を『脱線』させて、 この先どこへ進むのかわからなくしてしまえばいいのです。 例えば、朝食べた霙印のマーガリンが口を利いたらどうでしょう?

「おい! 安物で悪かったな」・・・と。

母親がテーブルに置いたのは、ネズミと包丁だったらどうでしょう?

「お母さん忙しいから、自分でさばいて?」・・・

学校の自分の座席に、レストランの子供用のイスが置かれていたら?

「先生! 前の人の座高が高くて、黒板が見えませ〜ん!」←ただのいじめです

バスの料金は子供銀行券しか受け付けてくれなかったらどうでしょう?

「お客さん悪いね。うちは子供銀行券しか使えないんだ」

家に帰った主人公に母親がこう言ったらどうでしょう?

「また来たの? あんたも好きね」・・・と。

 予想外の展開を発展させる

マーガリンが口を利いた・・・あはは。これで終えてはいけません。 それではただのギャグになってしまいます。脱線させた列車を停車させてはいけないのです。 このままどこへ行くのかわからない列車を、猛スピードで走らせた方がおもしろいと思いませんか? では、こうしてみましょう。そのマーガリンは「このままだとお前は明日バターになる。 それが嫌だったら・・・」と言います。 もはやこうなれば、誰も先の展開は読めません。

 予想外の展開を起こす時の注意

線路の破壊は、できればシナリオ構想段階でやっていただきたいのですが、 既に作り始めてから「この辺は先が読めそう」と思うこともあると思います。 そんな時は、遠慮なく破壊してください。ただし、その後の修正(つじつま合わせ)を怠らないように。 間違っても、「なぜマーガリンが口を利いたのか」という理由を説明し忘れてはいけません。

 まとめ

ファンタジーRPGでも、学園ものRPGでも、これは物語のあるもの全てに言えることです。 プレイヤーに線路の先を見せてはいけません。もし先が見えてしまうだろうなと思ったら、 線路のポイントを切り替えて、時には壊して、列車を大きな布で覆って、 行き先を知られないようにしなければならないのです。そうすることによって、 プレイヤーの興味を保つ、先の読めない物語ができるのです。


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