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 魅力は比較で引き出される

 砂場の砂の山を大きく見せるには?

突然ですが、砂場で作った砂の山を大きく見せるにはどうしたらいいでしょう?  ビッグライトを使う? ガリバートンネルに入る? いずれもドラえもんに登場する道具ですが、 これらを使うというのはちょっと現実的ではありませんね。 ただ、後者のガリバートンネルに関しては、考え様によってはとてもいい案かもしれません。 そうです。山を大きくするのではなくて、周りのものを小さくするのです。 そうすることによって、そのものがあたかも大きいものであるかのように見せることができます。 砂場の砂の山が大きく見えた所で何の得がある? と思うかもしれませんが、 実はこの事はRPGにおける様々な要素にも同様の効果を発揮するのです。

 谷があるから山がある

物語には『盛り上がり』の波が必要です。 面白いゲームを作りたいが故に『常に盛り上げていたい』と思うかもしれませんが、 それはあまりお勧めできません。 なぜならば、平野があるからこそ山や谷があるのであり、ずっと山が続いてしまうと、 それは山ではなくて平野と認識されてしまうからです。 プレイヤーにとっては海抜0メートルの平野をまっすぐ進むのも、 海抜3000メートルの平坦な山道を進むのも同じことなのです。 肝心なのはどれだけ高いところを歩かせるかではなくて、 どれだけ高低差をつけられるかではないでしょうか?  次の2つの物語を見てください。

登場人物
主人公、主人公の友人『ドス』、主人公のクラスメイト『コイ』

◆物語1:海抜3000メートルを突っ走る場合
・告白してふられた主人公の友人ドスが突然モンスターに変身する
・ドスは「恋愛なんかこの世からなくなれ」と叫びながら街を破壊する
・ドスが罪の無い人々を傷つける姿を見て主人公が覚醒する
・激しいバトルの末、主人公はドスを倒す

◆物語2:海抜0メートルから昇り降りを繰り返して海抜3000メートルまで登り、
最終的に海抜0メートルまで飛び降りる(ポイント^^;)場合
・主人公の友人ドスは、『明日クラスメイトのコイに告白する』と主人公に告げる
・主人公はお守りとしてドスに『寅柄のハンカチ』を渡す
・ドスが告白する相手コイは、主人公が好きな人物だった。だが、そんなことは言えない
・主人公、ドス共に眠れない夜を過ごす

・翌日。睡眠不足が響き、授業中に眠ってしまう2人
・ドスは告白相手の呼び出しに成功する。主人公は帰宅
・自宅の庭でボーっとする主人公の元に、ドスが告白したはずのコイが現れる
・次の瞬間「ドカーン!」と、学校の方から物凄い爆音が聞こえる

・学校では見たことのない怪物が暴れていた
・軍が出動するが手におえない。逃げ惑う住民達
・主人公は親戚の家に避難する。
・怪物のニュース映像を見る。それは見慣れたハンカチで傷口を抑えていた
・「まさかあいつは・・・」街に戻る主人公

・軍の制止を振り切り怪物の元へたどり着く主人公。怪物と目が合った
・怪物は主人公に襲い掛かる。軍によって何とか助けられる主人公
・怪物が雄たけびを上げる。それは主人公の耳には「恋愛なんか・・・」と聞こえた
・途方にくれる主人公。そこへコイが現れる

・コイに怪物がドスかもしれないと告げると、彼女は自分を責める
・コイは「自分なら何とかできるかもしれない」と怪物の元へ向かう
・コイと怪物は目が合った。しかし、怪物は何のためらいもなく襲ってくる
・コイは深い傷を負った。主人公にはなす術がなかった

・コイの搬送された病院で翌日を迎える主人公
・翌日怪物は消えていた。事件は解決したかに思われた
・ふと主人公の頭にドスの顔が思い浮かぶ
・主人公はドスといつも一緒にいた場所へ走る。怪物はそこにいた

・怪物は主人公の姿を見ると逃げてしまう
・ドスの名を呼ぶと、怪物は立ち止まりこうつぶやく「彼女はお前が好きなんだ」
・怪物はどこかへ行ってしまう
・自宅に戻った主人公は、再び怪物が暴れているとのニュースを見る
・怪物はコイのいる病院へ向かっているという

・主人公がドスとの思い出を振り返ると、なんだか体が熱くなってくる
・主人公と怪物が再び接触する。怪物も主人公も殺気に満ちていた
・怪物が主人公に襲い掛かる。主人公は説得しようと試みるが上手くいかない
・主人公は激しい攻撃を加えられたが、不思議と痛くはなかった

・激しいバトルの末、主人公はドスを倒す
・「なんでこうなるんだ・・・」と言う主人公
・それに対してこんな返事が「それは私が聞きたいね」
・どうも様子がおかしい。周りを見渡すと、そこは教室だった
・横で友人が笑っている。どうやら主人公は夢を見ていたらしい。

・放課後主人公はドスに告白は止めろと告げる
・なぜかと言う友人に対して主人公はこう言う「俺も彼女が好きだから」(うわ〜青春^^;)


 単純に長いだけじゃんかと思うかもしれません。実はそうなんです。 『谷の部分』というのは『物語があまり進展しない部分』でもあるので、 それを付け加えようとすると必然的に物語全体が長くなります。 どうですか? 展開自体は全く同じなのですが、 間に『谷』を挟んだ方が『山』はより高く見えますよね? 

 谷の正体を探れ

前節では物語をより魅力的にする為には『山』だけでなく『谷』も必要であると書きました。 『山』が『盛り上がる部分』であることから、『谷』は『盛り上がらない部分』と言い換えることができます。 それではRPGにおける『谷』とは具体的にはどんな部分を指すのでしょうか?

ダンジョンの攻略? フィールドの移動? これらは劇的な状況に陥る事がない為、 物語の『谷』であると言う事ができるでしょう。しかし、一概に全てが『谷』であるとは言えません。 『ヒロインが誘拐された為に、彼女を助けに伯爵の屋敷に忍び込む』場面を考えてください。 この時ダンジョン(屋敷)を攻略しているプレイヤーの心境はどうでしょう?  上手く主人公に感情移入できていれば 「待ってろヒロイン。今助けてやる」と思っているのではないでしょうか?  これは『谷』というよりはむしろ『山』に近いでしょう。

他に『谷』として考えられるのは『物語があまり動かない』ところです。 それは戦いの準備段階かもしれませんし、戦いの後の休養かもしれません。 これらは次の『山』をより高く(劇的に)見せるのに絶大な効果を発揮しますが、 あまり長いとだれるので注意が必要です。

『山』だの『谷』だの難しいですが、こう考えるとわかりやすいです。 状況をゲームではなくて純粋な物語としてとらえるのです。 『ヒロインを助けに屋敷へ侵入する』場面を想像し、 これが劇的だと思うのならば『山』そうでなければ『谷』であると言えます。

 『山』や『谷』はどう組むべきか?

こればかりはストーリーや作風次第ということになってしまいますが、 やはり交互に組むのが理想的と言えるのではないでしょうか?  と言っても、『谷山谷山谷』で終わってしまってはちょっと物足りない感じがしますので、。 クライマックス部分を強調して『谷山谷山谷山高山』とするのがいいかもしれません。 ツクールに於いては、最初がつまらないと最後までプレイされない可能性があるので、 オープニングを『山』から始めると良いでしょう。 いきなり『バーン!』と劇的なシーンをぶつけてプレイヤーを引きつけるのです。

 比較でキャラクターの成長を演出する

比較で明確になるのは『波の高低』だけではありません。 比べたもの同士の『相違点』も明確にする事ができるのです。 例えば『主人公が思い悩む過去の過ち』と同じ状況を現代に作り出します。 果たしてその時主人公はどのような行動をとるのか。 もしも同じ過ちを繰り返さずにその状況を克服したのならば、 主人公は以前と比べて成長したという事になります。 これの例を挙げると次のような感じです。

  • 弓の名手と言われた主人公が、ある日謝って子供を撃ってしまう
  • それ以来子供を見ると、手が震えて弓はおろか鉛筆すら持てなくなる
  • 戦争が始まり、主人公にも徴兵令がくだる。
  • 弓の名手ということを知ってか、弓部隊に配属される
  • 不運にも以前と似たような場面に遭遇する。打たなければ仲間は死ぬが・・・

という感じですね。ただ単に周りのキャラクターに『お前変わったな』と言わせるよりも、 同じ状況に陥らせて主人公の過去と現在を比べることで、 より劇的な場面を演出する事ができるのです。 もちろんその時の状況は『困難なもの』でなければなりません。 いつでもできるような事をしただけでは、 『劇的』どころか『シラ〜』っとしてしまいます。

 ★灰色は背景次第で白くも黒くも見える

次の文字の色を見てください。どちらも同じ色を使っているのですが、 黒背景では白っぽく、白背景では黒っぽく見えませんか?
同じ色◆ ◆同じ色
 ◆←このマークなんか特に色が違って見えますね。
このように色は背景色によって見え方が違ってきます。 この事はキャラクター作りや場面の演出にも同じことが言えるのです。 例えば『ボケ・バカ』という2人のパーティーに普通の人間が加わると、 その人物は『普通の人間』を通り越して『真面目人間』と認識されます。 例を見てみましょう。


「うわ〜この宿、意地悪だぁ」
「意地悪っ♪ 意地悪っ♪」
「何が意地悪なんだ?」
「だって宿賃が計算式なんだも〜ん」
「算数っ♪ 苦手っ♪」
「まさか・・・」
「543−210・・・確かに・・・って」
「これ電話番号じゃないか」
「あっそうなんだぁ」
「へろへろへろ〜♪」
「・・・・・・」

これだけではなんとも言いがたいところがあるかもしれませんが、 イベントの数をこなしていくうちに、彼の印象は間違いなく『真面目』に定着します。 (周りに影響されてヘロヘロ〜なんて言い始める可能性もありますが^^;) 無意識のうちに他のメンバーと比較されてしまうのです。 これはかなり極端な例ですが、パーティーの構成メンバーは、 時にキャラクターの印象に多大な影響を与えるので注意が必要です。


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