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 言葉の力

突然ですが、次のセリフを見て、 その言葉を発している人間をそれぞれイメージしてみてください。

「やっぱり、めだまやきにはおしょうゆだね」
「やっぱ目玉焼きにはしょう油だよね」
「やっぱり目玉焼きにはしょう油よね」
「やはり目玉焼きには醤油じゃな」

さて、イメージできましたか? いずれも言っていることは全く同じです。 違いは「やっぱり」の微妙な変化や、漢字を有無です。 たったそれだけの違いなのに、上から順に年をとっていくキャラクターを イメージした方が多いのではないでしょうか? 一見当たり前のことのようですが、ストーリーを見せることにおいては、 これを使うのと使わないのとでは結構差が出てきます。 今回は言葉に秘められた、この力を探っていきたいと思います。

 言葉は年齢を表現する

言葉は時代と共に変化するものです。従って、言葉の言い回しによって、 その人物の年齢を表現することができます。例としては「じゃ」 「おらん」「知らん」等を使うと年配の、 「じゃん」「ってか」「だし・・・」等を使用すると若い印象があります。 また、女性に於いては「しょう油だよね」とすると幼く、 「しょう油よね」とすると若干大人っぽい感じに、 「しょう油だわね」なんてすると更に年配になります。 また、「おしょうゆ」「しょう油」「醤油」と漢字の頻度を増やすだけでも、 ある程度年齢や性格をあらわすことができます。

 言葉は個性を表現する

ゲーム上のセリフは、話している人物の名前が表示されなくても、 誰が話しているのかがわかるのが理想です。 しかし、それにはこの人ならこう言うだろうということをプレイヤーにわからせるような、 しっかりとしたキャラクター作りをする必要があります。 それができたら苦労はしない? そうです。その通りです。そこで、ちょっとした裏技を紹介します。 方法は簡単。キャラクターのセリフにちょっとした個性を織り交ぜてみるのです。 すると、あら不思議。簡単に一目で誰が話しているかわかるキャラクターができあがりました。 例として『目玉焼きに練乳をかけている人を見た時』という一般的な状況(どこがだ・・・) に個性を織り交ぜてみます。

中国料理人風(語尾にアルをつける)に・・・
「目玉焼きに練乳アルか? それ・・・美味いアルか?」

お姉さん風(ちょっと冷たげ)に・・・
「目玉焼きに練乳? ばかじゃないの?」

おばちゃん風(ちょっと下品)に・・・
「目玉焼きに練乳だって? あはは。変わった人もいるもんだねぇ」

侍風に(漢字を多めに。「ん」を「ぬ」に替えてみたりとか)・・・
「なに? 目玉焼きに練乳だと? むむ・・・拙者には理解できぬ」

お兄さん風(ちょっとだけ乱暴)に・・・
「へ? 目玉焼きに練乳だって? う、美味いのかそれ?」

子供風(漢字を少なめに。文法をおかしくしてみたりとか)に・・・
「めだまやきにれんにゅう? お兄ちゃん・・・ヘンだよ」

悪魔風(「ケケケ」とか「ニュヒヒ」とか使っても○)に・・・
「目玉焼きに練乳・・・か。ククク・・・おかしな奴もいたものだ」

おっさん風(ひたすら乱暴)に・・・
「目玉焼きに練乳だぁ? お前変わってんなぁ・・・」

若い女の子風(語頭に「まじ」、語尾に「だけど」をつけたりとか)に・・・
「目玉焼きに練乳? ありえないんだけど」

外国人風(カタカナにして、文法崩せば完璧)に・・・
「ソレ、ナンデスカー?」

能天気風(ひたすら〜伸ばす〜漢字は〜あまり使わないでね〜)に・・・
「目玉焼きにれんにゅ〜? へぇ〜」

知的に(漢字を沢山使う)・・・
「目玉焼きに練乳か。決してあり得ない組み合わせではないな」

無口に(セリフを別のかっこに書けば良い)・・・
「・・・・・・」(ありえないって・・・)

と、こんな感じになります。これなら○○風の表示がなくても、誰が誰だか区別がつきますね。 もちろん、キャラクターの性格によっては、子供なのに『アル口調』だったり、 おっさんなのに『若い女の子口調』だったりもするでしょう。 これらはあくまで一例であって、必ずこのタイプの人に使わなければならないというものではありません。 これを活かすと、とても濃いパーティーになりますよ。←いいのかそれで(^^;)

 言葉は気持ちを表現する

「そっか。君は、目玉焼きに塩をかけるんだ・・・」

このセリフを見て、セリフを発している人間のどのような心情が思い浮かびますでしょうか?  『寂しい』『悲しい』という心情が伝わったら拍手です。次に、このセリフをちょっと変えて・・・

「そっか。君は、目玉焼きに塩をかけるんだ」

としてみます。すると、ただ「・・・」を無くしただけなのに、一転して 「自分とは違う行動を取る人に対する興味」へと心情が変化しませんか?  このように、セリフは一文字違うだけで全く違う心情へと変化するのです。面白いですね。 上手く使えば喜びの中に寂しさを織り交ぜるとか、 複雑な感情を表現することができます。

 言葉は息を表現する

キャラクターが生き生きとしているとは、どういうことでしょうか?  私は、それは「キャラクターの話す言葉が生きている」ということではないかと考えています。 その為には「制作者の言葉で話させるのではなく、キャラクターの言葉で話させる」 ことが必要だと思います。「北の村へ行ってみよう」とキャラクターに言わせたいとします。 しかし、そのままそれを言わせたのでは、生きたセリフとは言えません。 なぜならこれは制作者の言葉だからです。キャラクターの言葉にする為には、 そのキャラクターの「性格」「精神状態」「立場」を考える必要があります。

「北の村へ・・・行こう」
「行ってみようぜ。北の村に」
「北の村へ行ってみませんか?」
「とっとと北の村へ行こうぜ」
「北の村へ行っちゃう? 行っちゃう?」←どんなキャラだ

とするだけでかなり違います。

 まとめ

以上のように、言葉はとても強い力を持っています。 ちょっとしたセリフでも、何度も読み返して修正しましょう。 ちょっとしたセリフにもこだわるというこの小さい積み重ねが、 より魅力的なストーリーを作る大きな一歩ではないかと思います。


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